忍者ブログ

[PR]

2024年04月24日
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

はじめてのエレファンテック

2018年12月14日
この記事はMice Advent Calendarの16日目の記事です。

昨日の記事はnanoさんのステッパハーフのススメでした。
非常に丁寧に書かれたステッパハーフ(現マイクロマウス競技)機体の紹介記事でした。
情報満載の良い記事ですね。リタイヤなしとかヤベーなって感じです。

いきなりDCよりは、まずスッテパで堅実に作って制御を固めたうえでDCに移るという戦術は非常に賢いと思います。
上手く走れないとマジでつらいし。


さて、そんな私はというと、堅実とは程遠いフレキシブル基板でエンコーダ部を作るということに挑戦していました。
※フレキシブル基板:やわらかい基板。ぐにゃぐにゃ曲げられる。
 一般的な固い基板はソリッド基板と呼び区別するらしい。

今回の記事はエレファンテックという会社にフレキシブル基板を発注した際の注意事項やら感想やらを書きつくったものになります。


注文の背景


新作マウスの自作磁気式エンコーダ部をフレキシブル基板で実装しました。
多くの人は、エンコーダ基板を立てて実装しています。詳しくはエヌがのロボット製作日記を参照のこと。
フレキシブル基板でモジュール化することで以下の利点を狙いました。
 ・マウスが変わっても使いまわせる
 ・コネクタの位置を車軸から離せるため配線上の制約が小さくなる
 ・基板よりはフレキシブル基板の方が薄いため空間上の制約が小さくなる



この緑のぐにゃっとしてるとこがフレキシブル基板。

結論から言うと微妙な感じだったんですが、この辺りの話を始めるととっちらかるので、マウスが最短できるようになったら別途書きます。
今回のメインは発注の話です。




ここから本題


エレファンテックとは?

エレファンテックはプリンテッド・エレクトロニクス技術で世界をリードするスタートアップです。
インクジェットプリンタで銀ナノインクを印刷し、その上から無電解銅めっきを形成する独自技術でフレキシブル基板を製造しています。
エレファンテック公式サイトより。

エレファンテックは2014年に設立されたフレキシブル基板専門メーカーです。

エレファンテック株式会社
エレファンテック公式サイトより
ロゴは、おしゃれなぞうさん

インクジェット印刷と無電解銅めっきを利用した独自手法を用いることで、従来のフォトリソグラフィを用いる手法より、コストが低くリードタイムが短いことが売りだそうです。

ベンチマークとか取ったわけではないです。だれかお願いします。


エレファンテックに発注したきっかけ


2017年12月のマイクロマウス東工大杯にエレファンテックの方がいらっしゃっていて、そこで存在を知りました。

そこから、色々あって2018年8月にフレキシブル基板を発注し、今(2018年12月)に感想ブログを書くという流れです。(あふれ出る仕事の遅さ感)


発注するには?


ここからは実際に発注の流れをさらっていきます。
覚えている範囲で、私が行った順番で書きます。
発注するために必要な項目はこんな感じなはずです。
1. 作れる基板の仕様確認
2. 回路設計
3. 発注データ出力
4. 発注

エレファンテックは仕様書がわかりやすい


1. 作れる基板の仕様確認
何はともあれまずは頼むものの仕様を知らなくては話になりません。
エレファンテックのサイトから仕様書をダウンロードしましょう(リンク先の下の方)。
余談ですが、個人的に他社と比べて仕様が明確でわかりやすい気がします。
この仕様書読んでおけば間違いない(情報が散らばってない)というのが大きいのかも。

話を戻して、カタログやら仕様書やらたくさんありますね。
とりあえず、P-Flex 仕様書とP-Flex 設計ガイドライン読んでおけばいいと思います。
ちなみに、私が発注した8月にはP-Flex 設計ガイドラインはありませんでした


9月末にできたらしい

ざっと見た感じこれすごく便利ですね。
後述する技術ブログに書かれているような内容がまとまっていて嬉しいです。
日々良くなっていくのは1ユーザーとして嬉しい。

仕様書とか読む気しないんですけど


いくら仕様書がわかりやすいとはいっても、そもそもマニュアル類読む気しないという方もいるのではないでしょうか? (ホントか? そんな人間はフレキシブル基板を発注しようとか思わないのでは?)

そんな人には技術記事!
フレキシブル基板を中心に技術的な情報が記事として紹介されています。
1記事が短め(個人の感覚です)かつ画像もあって読みやすいです。
さらに仕様書の内容とかぶる部分もあるのでコレを読むことで仕様書が読みやすくなると思います。

また、中でもお勧めなのがフレックス基板にチャレンジシリーズです。
コレは東工大のロ技研に所属する学生の方がフレキシブル基板を作成するという体験記事のシリーズなのですが、作製の流れや陥りがちな過ち等とてもタメになります。

自分がやったことないことをする前に、体験ブログを探して情報集めたりすると思うんですが、公式でこの点がサポートされてるのはアツいです。
個人的にエレファンテックで最も感動した点です。


回路設計

2. 回路設計 
回路の設計に関してはあまり言うことはありません。
自分のお望みのデータを、お望みのCADで設計しましょう。
EagleかKicadを使っておくと、後述の発注データ出力のところでマニュアルを参照できるので、おすすめです。

注意すべき点としては
部品を乗せる部分には補強版を付ける必要があるため、部品実装部は近くにまとめておくと良いでしょう。補強版を付ける理由は基板が曲がったとき部品が取れてしまわないようにです。


参考までに今回発注した配線図です。

長い。
たしか、灰色の枠線が補強板を付ける部分、上部の塗りつぶされた部分がコネクタ部だからレジスト塗らないでエリアだったはずです。



発注データの形式は?


そんなこんなで気づけば仕様やらなんやらを理解し基板を設計したとなれば、発注が見えてきます。
P-Flex 注文仕様書に発注に必要な情報がまとまっているみたいなので、整理がてら埋めてみるのがよいでしょう。

3. 発注データ出力
ということで、ここからは発注データ形式の話をしよう。
発注に必要なデータは以下です。
  • アートワーク設計を含む場合
    • 回路図データ
    • 外形データ
  • アートワーク設計を含まない場合
    • 基板アートワークデータ(拡張ガーバー RS-274Xが標準のファイル形式)
      • パターン
      • レジスト
      • シンボル
      • 外形線
      • 補強板
      • 補強板指示(補強板IDと貼り付け位置が分かるもの)
  • 部品実装を含む場合
    • 部品表(部品調達代行の有無にかかわらず)
    • 実装指示


マイクロマウス界隈で主流のEagleとKicadに関してはガーバーファイルの出力方法が公式サイトにまとめてあります。ありがたい。
他のCADを触ったことないですが、今後情報を追加していく予定らしいです。
たぶん基本的には必要な情報をレイヤー別に分けてガーバー出力すればよいのではないかと思いますが。

いざ発注、その前に


さて、発注するために必要な項目について、振り返ってみましょう。
 1. 作れる基板の仕様確認 【済】
 2. 回路設計       【済】
 3. 発注データ出力    【済】
 4. 発注
3番まで修了しました。

次はいよいよ発注! 

と行く前に一回落ち着いてデータを確認しましょう。
ソリッド基板(よく使う固い基板)と違いフレキシブル基板はなかなかのお値段するので確認が大事です。

もう一度、先述のフレキシブル基板にチャレンジシリーズとかを見直すことをお勧めします。
参考までに私の経験から注意しておくことを書いておきます。
これさえチェックすればいいというものではないから必ず自分で確認するんだぞ!!!!

注意点
1. 部品実装部、コネクタ部には補強版を付ける(付けないと曲がって部品が取れるらしい)
2. コネクタ部の端子間にはレジストを塗らない(塗ると寸法精度と厚くなりコネクター装着が厳3. しい)
4. レジストの開口部からシンボル0.5mm開ける
5. はんだ付けするパッドやリード部はレジストを開口する(開口しないとはんだ付けできない)
6. レジストの開口部はわざと狭くしてパッドの浮きを防ぐ
浮きを防ぐにはできるだけ大きくレジストを被せる方が良いので、図の一番左の例のようにパッドの全周にレジストを被せる方法が最も有効です。
エレファンテック:フレキシブル基板 P-Flex™️ 設計のコツ「レジスト・シンボル・外形編」より

特に6番、ヤバいです。
驚くほど簡単に剥げていきます。
ちょっとはんだ付けに手間取っているとパッドがなくなってます。
皆さんは気を付けましょうね。


中央のQFNのパッドの白くなってる部分は全部取れました。笑える。

ちなみに、6番のリンク先には、今回紹介していないフレキシブル基板が切れないための工夫とかも書いてあるので是非一読ください。

発 注 !


最終確認も終わり、いよいよ発注です!
エレファンテック、発注の仕方はわかりづらいです。
他社みたいにポチポチ情報を埋めていけば自然と発注できるみたいなページは存在しないみたいです。見つけられてないだけかも。

前回発注時は問い合わせフォームから
質問→見積もり→発注
と行いました。

ちなみに最初の返答はこんな感じでした。

注意:2018年8月時の情報です。
>1. P-Flex PI/PET は現在個人で注文可能でしょうか。 ⇒1枚からでもご注文可能です。(1個あたりの価格は割高にはなりますが)
 >2. 注文できるのであればPIとPETの値段の差は如何ほどでしょうか。⇒PETはデータ手直し無ければ、15000円~となります。オプション追加は別途料金・日程が加算されていきます。  PIは30000円~となります。こちらもデータ手直し無の場合です。同様にオプションで上記と同様価格が加算となります。

ここからやり取りを繰り返して最終的に発注までいった感じです。
この際、担当の方が非常に丁寧で、データのミス等を指摘くださいました。
この場を借りて感謝申し上げます。そして、ご迷惑をおかけし申し訳ありませんでした。

参考までに発注見積もりを書いておきます。

主注文:
  P-Flex™PET50μm(8x76mm) 
オプション:
  補強板(3枚以下)
  ⾦メッキ+ニッケルメッキ
  コネクタ部特殊仕様端⼦部精度処理(±0.07mm) 
枚数:
  10枚
値段:
  40000円+税
注意:2018年8月時の情報です。


余談
この記事書くためにサイトに確認しに行ったらワンストップサービス最低100枚からになってるけど、問い合わせればきっと10枚とかでも大丈夫だよね…? うん。きっとだいじょうぶだいじょうぶ。
ダメだったらこの記事が誰向けなのかよくわからなくなってしまう。

受注後


発注が無事完了すると、着工開始直前にメールが届くそうです。
私の時は忙しい時期だったからか不具合でメールが遅れましたが、本来ならこのメールで発送予定とかが知らされるものと思います。

データ受領から発送まで約2週間くらいでした。

基板は、紙で挟まれた状態で届きます。写真残し忘れました…。
 紙 基板 紙 基板 紙 ・・・ 紙 基板 紙
みたいな感じです。
私が注文した材質はPET(リフロー耐熱が200℃)でしたが、基板が溶けるため普通のはんだが使えないということで、低温はんだもついてきました。ありがたい…!

実装に当たっては、白光のFX600の最低温モードで実装しましたが、基板がみるみる溶けていくということもなく、問題はなさそうでした。


まとめ


フレキシブル基板というものに初めて挑戦したのでブログを書いてみました。
ぐにゅぐにゅ曲げられる基板というのは面白く、アイデア次第で色々新コンセプト打ち立てられそうです。
ただし、やっぱり安くない買い物なので設計ミスには気をつけましょう。


私は、先述のパッドが剥げる問題で基板ダメにしたので近いうちに再発注します。







明日は、アブノーマルさんの「お酒っておいしよね2018」です。
個人的にはまったく共感できないんですが、もしかしたら明日の記事でお酒の魅力に気づくのかもしれません。楽しみにしてます。わくわく。

PR
Comment
  Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字