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2024年03月19日
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マウスに関係ない流行りのお話

2017年12月17日
※この記事は、知的ロボットサークルMiceのイベントMice Advent Calendar 2017の17日目の記事です。

昨日はもっちーの自己紹介&現状報告でした。
ぜひ頑張ってほしいですね。


さて、ここの数日のMice Advent Calendarはマイクロマウスに関する記事が並んでおります。
しかし、このAdvent Calendarはテーマ自由でマイクロマウスに関係なくてもいいそうです。


せっかくなので、今回はマウスから離れて全く関係ない話をしようと思います。


皆さま、最近流行っているものといえば何でしょうか?

 

 そう、『量子コンピューター』です! 







というわけで、今回のテーマは


「マイクロマウスに関係ない流行りのお話」


あらため


「量子コンピューター事始め
急に上司に話題振られても返せるくらいに」




難しい数式とかは全部抜かして、ざっくり量子コンピューターの話題について表面だけをなぞっていきます。

目標は上司から振られた「NTTの量子コンピューターが話題だけど、君はどう思う?」という攻撃を華麗にかわすことです。



量子コンピューターは1つじゃない! 


量子コンピューターとは、その名の通り量子効果を利用して計算の高速化を狙った計算機です。
古典コンピューターが物理的な小型化限界に到達しつつある現在、新たな計算高速化の方法として注目されています。

実はこの量子コンピューター、いくつか種類があることをご存知でしょうか?

・量子ゲート方式(IBM の IBM Quantum Experience
・量子イジングマシン方式
   コヒーレントイジングマシン(NTTの量子ニューラルネットワーク
   量子アニーリングマシン(D-Wave Systems の D-Wave

このいずれも原理が異なります。
一口に量子コンピューターと呼びますが、混同しないよう注意しましょう。




量子ゲート方式


量子ゲート方式は、
古典コンピュータがビット(0 or 1)で情報を表し、論理演算(AND OR …)を用いて計算を行うように、
状態の重ね合わせを許した量子ビットで情報を表し、ゲートと呼ばれる操作を用いて計算を行います。

何を言ってるかわからないと思いますが、イメージは古典のコンピュータの原理に量子効果を取り入れ拡張した感じです。

そのため、プログラムによって1ステップずつ実行することができますし、理論上は汎用計算可能と言われています。
(もちろんプログラミングの仕方は、専用の特殊なものとなるそうですが。)


実際に実現されている量子ゲート方式の量子コンピュータとしてはIBM Quantum Experienceが有名です。
IBM Quantum Experience はクラウドで公開されており、だれでも使うことができるそうです。
ネットさえ使えるなら、量子コンピュータをだれでも使えるってすごい。


この量子ゲート方式、量子ビットの個数で計算可能な問題の規模が決まるのですが、現在は16ビットまでが実現されているそうです。
16ビットでは古典コンピューターでも簡単に解ける程度の問題しか扱えず、古典コンピューターを超えるにはまだまだ先が長そうというのが現状です。
将来に期待ですね。


量子ゲート方式の原理とかについての詳しい話をしだすと、本格的に難しくなってくるのでこの辺で止めておきます。説明できるほど詳しくないし。
気になる方は各自で調べていただければと思います。


まとめ
量子ゲート方式は、汎用量子計算が可能と言われている反面、まだ古典コンピューターが(計算量的に)実行困難な複雑な計算をすることはできません。



量子イジングマシン方式


量子イジングマシン方式は、イジングモデルと呼ばれる物理モデルを再現し、物理現象によって自然と安定な状態に向かうのを利用して問題を解きます。
(今回の記事ではイジングモデルについては説明しません。物理の分野でよく用いられるトイモデルだと思ってください。)

量子イジングマシン方式のイメージは粘菌コンピューターとかと同じです。


都市部に餌を置き粘菌を放つと、粘菌の形成した経路が最適な経路となっている
= 粘菌を利用して経路問題を解けている

問題設定をうまく現実に再現することで、自然現象が勝手に解へと導いてくれるってことですね。


量子イジングマシンは、イジングモデルを再現する都合上、イジングモデルに焼き直せる問題しか解くことはできません。
つまり汎用計算可能ではなく、特定の問題だけを一瞬で解ける専用計算機の立ち位置になります。
よく言われるような古典コンピューターを駆逐するようなことにはなりません。共存する形ですね。


さて、となると気になるのがイジングモデルに焼き直せる問題とは一体何か?という点です。
しばしば代表例として挙げられるのが、最適化問題です。

最適化問題とは、ある条件の中で最も良い組み合わせを選び出す問題のことです。
例えば、巡回セールスマン問題ナップザック問題、etc…。

これらの問題は、問題の規模が大きくになるにつれ必要な計算量も指数的に増えていくため、古典コンピューターの総当たり先方では計算が困難であるという特徴があります。

しかし、量子イジングマシンでは、物理現象は自然と安定な状態(エネルギーが最も低い状態)へと向かうという特徴を利用し、問題設定をイジングモデルに再現することで自動的に答えが求まります。

この特徴から、古典コンピューターの限界を超えた計算規模を誇る問題に対し、有利に働くと考えられています。

また、これらの問題以外でもイジングモデルに焼き直すことさえできれば、このコンピューターで解くことができるため、ハードの開発と同様に他の問題のイジングモデルへの焼き直しも研究の焦点となっているようです。


コヒーレントイジングマシンと量子アニーリングマシン

量子イジングマシン方式は、イジングモデルを再現する方法によってさらに細かく区分が分けられています。
コヒーレントイジングマシンと量子アニーリングマシンです。


光でイジングモデルを再現するコヒーレントイジングマシン。  
コヒーレントイジングマシン概要図

最近話題になったNTTの量子ニューラルネットワークはコヒーレントイジングマシンの1つです。

図の青く円状になっている部分にコヒーレント光をパルスで送ることでイジングモデルを再現し、右につながっているFPGA等の回路で、観測および制御を行うことで計算機として成立します。

光の干渉を利用したこのマシンですが、
光の経路としてkm単位の光路を必要とするため小型化が難しい、
本当に量子効果を取り入れられているのかといった疑問の声もある、
といった課題も抱えているようです。

とはいえ、日本発の量子コンピューターですし今後の研究に期待していきたいです。




もう一つの量子イジングマシン方式の量子コンピューターとして有名なのがD-Waveです。
極低温による超電導を用いて、キメラグラフ構造という特殊な組み方を行うことで、量子系のイジングモデルを再現しています。

D-Waveは既に商用化されており、億単位の値段で売買されています。
NASAやGoogleが購入したことで話題になりました。

また、D-Waveは今年2048量子ビットを実現しており、個人的に最先端の量子コンピューターだと思います。



まとめ

量子イジングマシン方式は、すでに商用化されており古典コンピューターを超える計算速度を実現している反面、最適化問題と呼ばれる特定の問題しか解くことができません。



今回の記事のまとめ


現在、量子コンピューターと呼ばれるものには3種類あります。

  • 量子ゲート方式
  • 量子ネットワーク方式(コヒーレントイジングマシン)
  • 量子アニーリングマシン
です。

一緒くたに量子コンピューターと呼ばれることが多いですが、いずれも原理が異なり長所短所があります。

ニュース等で量子コンピューターについて見るときは、そのあたりに注意すると少し見方が変わってくるかもしれません。

また、もっと知りたいという方へ
量子コンピューターAdvent Calendarを見つけたので読んでみると面白いかもしれません。



「NTTの量子コンピューターが話題だけど、君はどう思う?」



「同じ種類の量子コンピューターであり既に実用化されているD-Waveに勝てるか、が焦点だと思います。日本発として頑張ってほしいところですね。」



こんなテーマにするんじゃなかった。


明日はあやたか君の音系の話です。
こうご期待。

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